2010年01月11日

シラー 2

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手袋

闘技の行なわれる
獅子の広場のまえに
フランツ王が坐っていた。
彼のまわりに王室の貴顕たち、
周囲の高いバルコンには
装いこらした貴婦人たち。

やがて彼が指で合図をすると
広い檻(おり)の戸が開かれて
ゆったりした足取りで
あらわれ出たのは一頭の獅子、
そして大あくびをしながら
黙然とあたりを見まわし
たてがみをふるい
手足をのばして
長々と身を横たえる。

そして王がまた合図をすると
べつなとびらが
ぱっと開いて
いきおいはげしく
おどり出たのは
一頭の虎。
獅子を目にとめると
虎は声高にほえ、
しっぽをふりまわして
すさまじく輪をえがく。
そして舌をのばすと
はばかるようにぐるぐると
獅子のまわりをあるきまわる
おそろしいうなり声をあげながら。
それから獅子のかたわらへ
うなりながら身をよこたえる。

すると王はまたもや合図した、
すると檻の二つの口から同時に
吐き出されたのは二頭の豹。
豹はいさましく闘志をみせて
虎をめがけておどりかかる。
虎はたけだけしい前足で豹をつかむ、
とたんに獅子がすっくと立ちあがり、
一声ほえる、すべては静かにおさまりかえる。
そしてぐるりと輪をつくり
殺意にもえて
猛獣たちは陣を取る。

そのときバルコンのはしから
手袋がひとつ、美しい手をはなれ
虎と獅子との
まん中に落ちた。

そしてクニグンデ姫はあざけるように
騎士デロルゲスにむかって言う、
「騎士さま、あなたがいつもわたしにお誓いなさるとおりに
あなたの愛が熱烈なものならば
さあ、あの手袋をひろってくださいまし」

すると騎士はさっと駆け出し
しっかりした足取りで
おそろしい囲いのなかへおりていき、
猛獣たちのあいだから
不敵の指で手袋を取りあげた。

驚きと恐怖の色をかべて
騎士たちと貴婦人たちが見まもるなかを、
彼は平然として手袋を持ちかえる。
すべての口から賞讃の声がわきあがり、
なかでも、まぢかな幸福を約束する
やさしい愛のまなざしで
彼をむかえるはクニグンデ姫。
そのとき彼は手袋を彼女の顔に投げつけて、
「姫よ、わたしは感謝などを求めてはおりませぬ」
そう言うと、彼はすぐさま彼女のもとを立ち去った。

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posted by Yuki at 07:00 | Comment(6) | TrackBack(0) | 本の記 -My Angle- | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは。シラーの詩を探していたらこのページが出たのですが、素晴らしい翻訳に感動しました>_<眼福です。 ホームページに転載してもよろしいでしょうか。もちろん出所は明記させていただきます。
Posted by ちゃに at 2012年04月30日 00:14
ちゃにさま コメントありがとうございます^^

この詩はとてもいい訳ですよね!

これはどこかの本から書き出したものです。
気に入った詩をずっとノートに書き留めていたのですが、
最初の頃はまだ中学生や高校生で、翻訳の重要さが分からず、
訳者の名前を書いていないことが多かったため、残念ながら今となってはどなたの翻訳か分かりません。
その旨、お書き添えの上、ご掲載いただけますか?
わたしの翻訳ではないので、こちらのサイトの明記は特に必要ありません^^
ちゃにさまのHPのご都合でどうぞ。

大人になってからメモした同じ詩は、手塚富雄氏の翻訳で違う言葉選びでしたから、
どなたか他の方の翻訳と思われます。
出典は、世界の名詩などを集めたものか、文学大系などのシラーの巻だと思います。

目にとめていただけて、シラーを愛する方にこの訳をご紹介できて、嬉しいです。
Posted by Yuki at 2012年04月30日 10:57
この詩をきっかけにシラーを知ったので、まだまだ初心者だけど、これからも日々精進していきたいと思います!感謝です*^^* ブログ応援してます!
Posted by ちゃに at 2012年05月02日 18:34
はずかしながら、フェイスブックのアドレスを添付しておきました((きゃっ 翻訳者の件、明記しておきますね。重ねてお礼申し上げます*^^*
Posted by ちゃに at 2012年05月02日 18:41
ちゃにさま、お返事ありがとうございました^^

そうですか、この詩からシラーに入られたのですね。
シラーの詩は素晴らしいと思います。
同じ思いを抱く方に目にとめていただけて、嬉しかったです。

フェイスブック、わたしは登録していないので最初のページまででしたが、
拝見しました。
こんな可愛らしい方だったんですね! 笑顔が素敵です。
ちゃにさんのような方に温かいコメントをいただいて、こちらこそ感謝です。

わたしもちゃにさんの未来やご活躍を応援しています^^
Posted by Yuki at 2012年05月02日 19:54
とても魅力的な記事でした。
また遊びに来ます!!
Posted by 伝わる履歴書 at 2014年01月04日 11:44
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